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「『長編一覧』」
『溢れる想い・全18話』

17

冴子
『明日へ』
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『ここは槇村の眠る墓地』
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冴子はクロイツ将軍の事後処理を終えて、槇村に会いにきていた。

あのもどかしい二人が、漸く互いの気持ちを伝え合ったと耳にしたので、
シスコンとも言える程、妹を愛していた槇村の元に報告に来たのだ。

美しい花束を持ち、その花に匹敵する美貌を持つ冴子は、物憂げに槇村の墓に向かい合う。


(槇村、やっとあの二人くっついたようよ?
貴方が逝ってから、もう6年近くになるのよね・・。
最初、香さんに出逢った時は、貴方が逝ったばかりだというのに、
あまりに勝気で真っ直ぐな瞳を持つ子だったから、少し意地悪な事を言ってしまったけれど、
私にとって香さんは、妹も同然な人よ。リョウの事で悩んでいた彼女を、私は知っていたから、
これで漸く心配の種が一つ減るわ。貴方は、どうなのかしらね?
自他共に認める程のシスコンだった貴方だもの、リョウなんかに最愛の妹をとられて、
怒っているのかしらね?・・フフ・・そんなわけないわね・・。
貴方のことだから、喜んであげているのでしょう?二人の事を・・。)


冴子はそう心の中で槇村に話しかけながら、
持って来ていた花束をそっと供える。

そして物憂げな表情を、笑顔に変えながら再度槇村に語りかける。


(私も・・新たな一歩踏み出さなくては・・ね?・・
貴方の事を忘れる事なんて一生できないでしょうけれど、
貴方の影に縋りついて生きるのは・・もうやめにするわ。
この美貌をこのまま廃れさせるなんて勿体無いでしょう?。
・・・でもね、槇村・・私がこの人生をまっとうし終えたら、
その時は・・ちゃんと迎えにくるのよ?いいわね?・・。)


冴子がここまで語り終えると、突然温かい風が冴子の頬を擽る。

その風はまるで槇村が『わかった』と微笑んでいるかのようであった。


「槇村・・・ありがとう・・また来るわね」


冴子はその温かい風に微笑みながらそう言うと、
スクッと立ち上がり、颯爽と自分の車に戻っていった。

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-----------------

リョウと香は朝食の後、早々に準備を整えて槇村の眠る墓地へと来ていた。

クーパーを墓地の駐車場に停めようとすると、
そこに冴子の赤いフェラーリが停まっているのに気づく。


「あれ?冴子さん来てるのかしら?」


「そうみたいだな」


(アイツも何か報告にでもきてんのか?・・俺達の事だったりして・・ハハっ・・)


「行くぞ」


「うん。あ、花束は私が持ってくわね。」


「おう」


いつもの花屋で買った花束を手に、二人は槇村の眠る場所へ向かう。

そして既に槇村への報告が終わり帰ろうとしている冴子と二人は顔を遇わせた。



「ぁ、冴子さんこんにちは」


「あら、こんにちは。槇村にご報告かしら?」


冴子はこの時、しっかり二人の手が絡まっている事に気づいて微笑みを向けた。


「ぁ・・///は・・はい//」


冴子のその全て解っているような言い回しに、香は顔を真っ赤にする。


「フフッよかったわね香さん」


「っ/////」


冴子の『よかったわね』とは、
二人のことに勘づいている発言だと、二人は否が応でも気づいた。


(まぁ・・手握ってるわけだし、普通気づくか・・
まぁ・・その内バレることなわけだし・・いっかぁ)


リョウはなんともない顔をしていたが、
香はその事に気が付くと、顔だけではなく全身を真っ赤にして何も言えなくなってしまった。


リョウは香の様子に気づき、苦笑いをもらしながら冴子に言う。


「冴子、お前も槇村に何か報告あるんだろ?もう終わったのか?」


「え?・・えぇ・・さっき終えて、いま署に帰るところよ」


「そうか・・。あ、そうだ・・クロイツの処理きつかったろ?
ちーとばっかし派手にやっちまったからなぁ」


「あら、大丈夫よ。でも・・貸しから3発くらい引いておいてね?」


「ぐっ・・やっぱそうなるのね・・」


リョウと冴子のいつもと変わらぬそのやりとりを、香は赤い顔で聞いていたのだが、
冴子の言った『貸し3発』という言葉に、香の胸はキシリと悲鳴をあげた。

冗談で言ってるのだと解ってはいても、漸く二人の仲が進展した今、
リョウのいつものモッコリ癖が、香は嫌で堪らなかった。

今までリョウにたいする嫉妬という感情は、
何とかハンマーという形で具現化してぶつけてきたのだが、
何故か香はこのときハンマーを召還できず、眉間に皺を寄せて俯くことしかできずにいた。

香の様子に気づかないリョウは、
繋いでいた手を離して冴子に食ってかかる。


(・・あ・・手・・何か・・嫌・・だな・・あたし・・
冴子さんに嫉妬してる・・。いつものことなのに・・)


「お前なぁっいつもいつも貸しばっか増やしやがってっ!
引くときはきっちり引くなんてっちーっとばっかし卑怯なんでないの!?」


「あらぁ、私は正当な取引をしているだけよ」


「なぁにが正当な取引だっ!」


「私、何か間違った事言っていて?」


「間違いだらけだろうがっ!今までのが全部正当な取引だってぇなら、
今までに貯まったツケぇ今夜にでも全部支払ってもらおうじゃないの!!」


リョウのその言葉に、いつもなら降ってくるであろうハンマーは出てこなかった。

冴子はハッとなって香の様子を伺う。すると香は必死に何かを耐えるような表情で俯いていた。


「ちょっ・・ちょっとリョウっ」


冴子が非難めいた声を上げて香を指さしたので、
何かと思って視線を向けると香は僅かに震えてグッと拳を握り締め俯いていた。


「香?」


リョウに名前を呼ばれて、香は困惑しきった顔をリョウへ一瞬向け、
我にかえったかのようにその表情を隠す。そして無理な笑顔をつくり慌てて言う。


「あっごっごめんっあははっ・・・・・えーっとなんだっけ?・・
・・あっ・・あたし先に兄貴のとこに行ってるわねっ・・
冴子さん、昨日の件ありがとうございましたっそれじゃぁっ」


香はそう言い放つと、その場からすぐにでも離れたくて
リョウ達に背を向けて走り出そうとした・・が・・


「なっ・・香っちょっと待てって!!」


走り出そうとした香より、リョウの手が香の腕を捉える方が早かった。


「っ・・は・・離してっ」


香は嫉妬に駆られた今の顔を、リョウに見られたくなくて
リョウの視線から必死に逃れようとしていた。


必死に自分の視線から逃れようとしている香を見て、
リョウは香が何を思っていたのか悟り、いつもの癖とはいえ、
香の前で繰り広げてしまった冴子との茶番を後悔した。


(・・っなにやってんだ俺は・・・・
もう心配させないってさっき言ったばっかだっつうのにっ・・)


リョウは背を向けたまま俯いている香を、少し強引に抱き寄せた。


「!?なっ・・ちょっ・・ちょっとリョウっ離してってばっ」


強引に抱き寄せられた香は、非難の声をあげながらリョウ腕から逃れようとする。


「嫌だっ」


そう言って、香を抱きしめる腕の力を強くする。


「りょ・・リョウ?・・」


リョウの切なげな言葉に、
香はリョウの腕から逃れようとするのをやめ、
首を後ろに向けてリョウを見上げた。


見上げた香の瞳は少し涙で濡れていて、それを見たリョウは堪らなくなり
香のその涙を唇で拭い、香の顎をそっと持ち覆いかぶさるようにして香の唇を背中から奪った。


「んっ!?」


リョウのその行動に、香は目を見開いて硬直した。
ここは外で、しかも冴子が見ている前で抱きしめられ、キスをされているのだ。

この信じられない状況に香の思考は真っ白になり、硬直したままリョウにされるがままであった。

しばらく啄ばむようなキスをリョウは繰り返し、
硬直してしまった香を正面に向かせ優しく抱きしめると、
顎を持ちなおし、深い深いキスをおとした。

深いキスに変わったことで、香の全身の力は抜けてゆき
リョウの柔らかな唇と巧みな舌使いに翻弄され、いま居る場所がどうとか、
誰の前でしているとか、そういう事全てを香から忘れさせていった。

数分間、情熱的ともいえるキスを続け、
リョウはゆっくりと名残惜しげに唇を離し、首だけを冴子に向けて言った。


「さっきの・・無しにしてくれ・・。今までのツケは今後の依頼で必要になる情報と交換な・・。
それと、これから俺達へ依頼する時はきっちり金もらうから・・そのつもりで。いいな?」


冴子は情熱的過ぎる二人の様子に、
唯々魅せられていただが、リョウのその言葉に我にかえり文句を言う。


「ぁ~あっお熱いことっまったく・・。
今まで散々時間をかけてきただけあるわねっ箍がはずれたってわけねっ。
でも、程々にしておくことね・・でないと・・皆にからかわれるわよっ。」


冴子のそんな文句に、リョウは香を抱きしめながら言い返す。


「大きなお世話だっ。それに、からかいたい奴には勝手にからかわせとけば良いのさ。
俺はそんなん気にせんもんねっ。・・それより、さっきの件良いよな?。」


冴子はリョウの変貌ぶりに驚きながらも、
天邪鬼一辺倒だった男を変えてしまった香と、そんな自分を素直に受け入れた男に、
清々しささえ覚えて微笑みを向け、リョウの申し出を受け入れた。


「えぇ異論はないわ。それじゃぁ、邪魔者は消えるわね。仕事もあるし・・あ・・でもその前に・・」


そう言って冴子は、リョウに抱きしめられたままの香に近づき、そっと耳に囁いた。


「香さん、貴女凄いわ・・このリョウをこんなにも変えてしまうなんて・・ね・・。
少しは女として自信を持ちなさい?」


冴子はそう香に囁き終えると、
今度はリョウに向けて人差し指をズイッと突きつけながらハッキリとした口調で言い放った。


「リョウ、もう香さんを悲しませるんじゃないわよ?いいわねっ?」


リョウは冴子のその言葉に笑みをもらしながら言う。


「あぁ、誓うよ」


「フフッ聞いたわよその言葉・・それじゃぁまたね♪」


冴子はリョウの決意を確認すると、意気揚々と愛車に乗り仕事へと戻っていった。



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