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『短編集』

『With You - Latter Part.』

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新宿駅からそう遠くない場所に位置する『椿屋』のコンセプトは『大正時代』。

そのコンセプト通り、旨いコーヒーと、
落ち着いた時間を提供するといった、今時珍しいスタイルの店であった。

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『椿屋・店内』
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リョウは、店に入るなり、
椿屋のウエイトレスに声をかけられた。


「いらっしゃいませ。お客様、お連れ様がお待ちです。
ご案内させていただきます。こちらでございます。」


どうやら轍さんは、リョウの特徴などを、
時計職人にそれとなく伝えてくれていたようだ。

リョウは轍さんの気遣いに感謝しながら、
ウエイトレスの案内に従い、店の奥へと入っていった。

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ウエイトレスに案内されたのは、店内の一番奥の席。

高級感溢れる色調の、対面式の席に座っていたのは、
白髪で鼻が高く、一目で異邦人だと解る風貌の老人であった。

ウエイトレスが、リョウを案内して来たのを感じると、
老人は今まで視線を向けていた窓の外から、リョウへと視線を向ける。

老人はほんの数秒をあけ、
対になっている席に座るようにと、何も言わずに手で促した。

リョウも、早く時計の事について話をしたいと思っている為か、
この老人の無言の申し出に静かに従い、椅子へと腰をおろした。

その様子を見ていたウエイトレスが、素早く口を開く。


「ご注文がお決まりになりましたら、お声がけくださいませ。」


ウエイトレスがそう言って去ろうとするのを、老人は低く渋い声で引き止める。


「君・・こちらに、私と同じものを用意して差し上げなさい」


老人の言葉に、ウエイトレスは素早く注文表を手に取ると、
そのまま伝票に走り書きしながら答える。


「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」


ウエイトレスはそう言うと、伝票を切り取り、
机に備えつけられている伝票置きへと置くと、
深々とお辞儀をして去ってゆく。

ウエイトレスが注文の品をとるために
姿を消したのを見計らった様に、老人はかけていた眼鏡を徐に外し、
ニコリと、嫌味のない笑みをリョウに向けながら口を開いた。


「この店は、このコーヒーが一番旨くてね。
初めて訪れたのだろう?勝手をして悪いかとも思ったが、
これは私なりの挨拶の流儀だ。気を悪くせんでくれ。」


老人のこの言葉に、
リョウは轍さんの言葉を頭の中でなぞりながら、
丁寧に対応してゆく。


(・・轍さんの話じゃ相当気難しいらしいしな・・
・・・ボロが出る前に、時計見てもらわんと・・)


「この店に来るのは、確かに初めてだ。お気遣い、感謝しますよ。」


リョウはそう言いながら、老人の深緑色の瞳をしっかりと見据えた。

そんなリョウに、老人は小さく頷くと、
手に持っていたコーヒーを一口飲んで口を潤し、穏やかな表情で言う。


「それじゃぁ・・早速見せてもらおうかな?・・
普通の店では、手の施しようのないモノだと聞いていてね。
ずっと、どんな状態なのか気になっていたんだよ・・。」


リョウは、老人の早速の申し出に少し驚いていたのだが、
リョウにとっては願ってもない申し出だっ為、そこは深く突っ込まずに、
すぐさまポケットの中の時計を取り出して答える。


「そいつは助かります。これがその時計です。」


リョウはそう言いながら、包んでいた白いハンカチを、慎重にといてゆき、
『あの日の姿』のまま眠り続けている時計を、ゆっくりと老人に差し出した。

老人は、差し出された時計を、ハンカチごと慎重に手にとると、
少し眉間に皺を寄せ、光のあたる角度を変えて見たりしながらブツブツと言う。


「・・これは・・銃痕か・・メイン基盤は生きてるな・・
だが・・量産されている時計じゃないか・・ん?・・これは・・」


老人はそこまで言うと、徐にリョウへと視線を移して暫し沈黙する。

突然黙りこくってしまった老人に、リョウは訝しそうな表情を浮かべて問う。


「・・どうしたんです?・・」


リョウの問い掛けに、
老人は視線を時計の戻し、大きく溜息をついて見せた。

老人の仕草を見たリョウは、
最悪な事態を予想し、珍しく軽く身構えながら再度問う。


「・・何とかなりそうですか?・・」


リョウの問いに老人は、
何とも例えようのない表情を浮かべ、ポツリポツリと口を開いてゆく。


「この時計を、そっくりそのまま復元するのは無理だな・・」


リョウは常々、この時計が復活した姿を、
いつか香に見せてやりたいと、そう思っていたからこそ、
時計職人を1年以上も探し続けていたのだ。

そんなリョウにとって、漸く見つけた職人から告げられたこの言葉は、
リョウを落胆させるのに十分すぎる力を持っていた。


「・・そぉですかぁ・・轍さんの薦めてくれた職人が言うんだ・・
他の職人にあたっても・・同じ事言われるんでしょうねぇ・・はぁ~・・」


リョウが傍目にも解るように落胆しきっていると、
先ほどリョウを席へと案内してくれたウエイトレスが、
トレイにコーヒーをのせてやってきた。


「お待たせいたしました。」


ウエイトレスはそう言いながら、
淹れたてのコーヒーをリョウの前へと置く。


「ごゆっくりとお寛ぎくださいませ。」


ウエイトレスは、礼儀正しくそう言い、
深くお辞儀をすると、クルリと二人に背を向けて、
他の客の元へと去ってゆく。

リョウは、何とか調子をとり戻そうと、
出されたばかりのコーヒーを乱暴に手に取ると、
熱々のコーヒーだというのもお構い無しに、喉をならして一気に飲み干してしまった。

そんなリョウの様子に、老人は一瞬目を丸くすると、スっと目を細めて問う。


「どうです?ここのコーヒーは。絶品でしょう?。」


老人の問いに、リョウは深々と溜息をついて答える。


「・・はぁ・・香のコーヒーのが旨い・・。」


熱々のコーヒーを一気飲みしても尚、
リョウの落胆の色は薄れる事はなかったのだろう。

当初の老人への気遣いはどこへやら・・・
リョウはここにきて、つい本音をポロリと零す。

そんなリョウの様子を目の当たりにした老人は、
突然、その顔を破顔させると、店中に響くように大笑いをはじめた。


「Hahahahaッ」


突然店内に響いた笑い声に、
店内の客達は何事かと、好機な目でリョウ達の席へ視線を送る。

その視線に気づきながらも、老人は笑いを堪えることができないようであった。

そんな老人に、リョウはガックリと肩を落としながらジト目を向ける。

流石に老人も、このリョウの視線には何か思うところがあったようで、
必死に笑いを堪えながら、ポツリポツリと言葉を落としてゆく。


「くっくっ・・いや・・すまない・・貴方にとって、
この時計がどれほど大切な物なのか・・試させてもらったよ。
くっくっく・・さっき私は『復元』は出来ないと言ったが、
・・・くっく・・まだこの時計を生かしてやることは出来る。
幸い・・フレームや基盤は、生きているようだからね・・。」


この老人の言葉を聞いた途端、
リョウはガタンと辺りに大きな音を響かせながら立ち上がって言う。


「そ・・そりゃ・・本当か!?」


至近距離でそう問うリョウの表情を見て、
老人はまた笑いを堪えながら答える。


「くっくっく・・外観が多少変わっても良いとなら、
この仕事引き受けさせてもらうよ。あぁ・・勿論、
この『文字入りフレーム』はきちんと使うから、安心したまえ。」


この老人の言葉に、リョウは心底安堵したように
自分の席に座りなおすと、深い溜息と共にポツリと言う。


「・・たのんます・・」


そんなリョウを見て、老人はふとあることに気づき口を開く。


「そういえば、自己紹介がまだだったね。
依頼主の名ぐらい知っておきたいんだが、
あぁ・・差し支えがなければで良いんだがね?。」


時計の傷跡から、リョウが『その道』の者だと、
老人は理解しているようで、少し控えめにリョウの名を問うた。

そんな老人にたいし、リョウは何の躊躇いもなく答える。


「・・・俺の名は、冴羽リョウ。名乗るのが遅くなっちまって、すまないね。」


この、リョウが何の気なしに告げた名を聞いた老人は、
何故か大きく息を呑み、そのまま硬直してしまった。

突然驚愕したような表情で固まってしまった老人を見て、
リョウは困惑したような顔で考えを巡らす。


(な・・何だ?・・何かまずい事言ったか?・・・・
あ”!?・・俺が何者か解って、びびっちまったのか?
・・ま・・まずったかなぁ?・・・)


リョウがそんな事を思っていると、
フリーズしていた老人が、ゆっくりと瞬きをしはじめ、
徐々にその表情は、恐れなどではなく、嬉しそうな表情へと変化していった。

そして、老人は深く深呼吸をし、目をキラキラと輝かせながら、
明らかに今までの態度とは違う様子で口を開く。


「・・日本に世界一のスイーパーが居るとは聞いていたが、
まさか、この私に修理の仕事を依頼にくるなんてっ・・・
さ・・冴羽さんっ!・・あ・・貴方の時計を手がけたと、
今後、業界の人間に言ってまわっても良いだろうか?
了承してくれると言うなら、依頼料は無料でかまわんっ・・
どうだろうか?・・・悪い話ではないと思うが?・・」


裏家業を知る者が、実際にリョウを前にすると、
大概の者は恐れおののいてしまうのが常なのだが、
極稀に、こういった反応を見せるものも中には居るのだ。

キラキラとした瞳で、返答を待っている老人を見て、
リョウは苦笑いを浮かべて言う。


「好きにしてくれて良いですよ。」


リョウがこうも簡単に了承した理由は2つ。

人柄と信頼性は、こうして会って話すだけで、
リョウはおおかたは見抜ける程の眼力は持っている。

そんなリョウの目に、この時計職人は、
『信頼出来る人物』として映ったという事だ。

そして何より、経済的に苦しい冴羽商事にとって、
この老人の申し出は、願ってもない案だったのだから、
リョウが二つ返事で了承した理由も、頷けてしまだろう。

リョウの了承を得られた老人は、
心底嬉しそうな表情を浮かべながら、
『壊れた時計』と自分のバックを持って立ち上がる。


「ありがとう・・。職人冥利につきるよ。
そうと決まれば、さっそく最高のものを仕上げなくてはっ。
完成したら『あの情報屋』繋がりで、冴羽さんのお宅へ届けさせるよ。」


老人はそう言い残すと、
テーブルの上の伝票を手にし、
慌しく『椿屋』を出て行ってしまった。

そんな職人の背中を見送ると、
フっと笑みを浮かべながら立ち上がり、
爽快な心持で、リョウも『椿屋』を後にしたのだった──。

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『椿屋の出来事から、約一ヵ月後』
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陽が暮れ始めた春の日、冴羽アパートには、
香がたった今作っている夕飯の良い匂いが漂いはじめていた。

リョウは、ソファに寝転びながら、
クンクンとその旨そうな匂いを嗅ぎ、
今夜の献立を、脳内で当てにかかる。


(ん~?・・このスパイシーな香は・・カレーだなぁ~?・・
・・独特な肉の匂いもあるしぃ~、あ”!チキンカレーかぁ?
鳥肉が安かったつって、喜んでたもんなぁ~・・あぁ・・腹減った・・)


リョウが脳内で『腹減った』と言ったの同時に、
グゥ~と小気味良い音がリビングに響いた。

リョウは自分の腹の音に、苦笑いを浮かべると、
香の居るキッチンへ行こうと立ち上がった。



その時─・・

ピーンポーンッ(冴羽アパートのチャイム)



冴羽アパートのチャイムが声高に鳴り響き、
その直後、キッチンで料理をしている香の大きな声が聞こえてきた。


「リョ~ウっごめん、今手が離せないの~っ出てくれる~?」


香の言葉を聞いて、
リョウはポリポリと頬をかきながら、玄関を開けた。



カチャッ(玄関をリョウが開ける音)

コトッ(何かに玄関の扉が当たる音)


リョウが扉を開けると、
既にそこには人の気配はなく、変わりに、真っ白な小箱が、
小さなメッセージカードと共に置かれていただけであった。

リョウは、小箱から聞こえる秒針の音に、
一瞬警戒をしたようなのだが、箱の上に置かれたカードを見て、
その表情を、一気に嬉しそうな表情へと変化させたのだった。

小箱の上に置かれたカードには、こう書かれていた。

City Hunter - Footsteps 006_0001

「・・言われんでも♪。しかし・・香にゃいつ頃話すかなぁ?・・」

メッセージの全文を読み終えたリョウは、フっと笑みを浮かべて
一言そう呟くと、小箱とカードをジャケットのポケットへとしまい、
夕飯を作ってくれている香の元へと、足早に向かったのだった─・・。

END

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